富士山に初めて登るなら、どのルートを選べばいいのでしょうか?

 
富士山には「吉田ルート」「富士宮ルート」「須走ルート」「御殿場ルート」の4つの登山ルートがあります。


いろいろ調べていると、それぞれの特徴が紹介されていて、「結局どれがいいの?」と迷ってしまうかもしれません。


私がおすすめするのは、吉田ルートです。


私はこれまで富士山に8回登りました。その経験から、初めて富士山に登る方には、山小屋やトイレ、救護所などが充実していて、困ったときに頼れる場所が多い吉田ルートがおすすめだと考えています。


この記事では、吉田ルートが初心者におすすめな理由を、実際の登山経験も交えながら紹介します。

初めての富士登山 吉田ルートが初心者におすすめな理由6選

初めての富士登山は吉田ルートがおすすめな理由① 山小屋が多い

吉田ルートの大きな特徴は、山小屋が多いことです。


2026年の富士登山では、吉田ルートに16軒、須走ルートに12軒、富士宮ルートに9軒、御殿場ルートに5軒の山小屋があります。4つのルートの中でも、吉田ルートは山小屋が最も多くなっています。


山小屋では休憩ができるほか、トイレを利用したり、食べ物や飲み物を購入したりできます。

山小屋で飲み物や軽食を買って、小屋の前で景色を楽しみながら休憩…ゆっくり上を目指しましょう


特にありがたいのが水分の補給です。


富士登山では、公式に1人1.5~2L程度の水分が目安とされています。2Lの水は、それだけで約2kg。2kgのお米をザックに入れて背負って登るのと同じくらいの重さです。


もちろん水分は必要なので、ある程度は持っていかなければなりません。しかし、必要な水をすべて五合目から背負って登る必要はありません。吉田ルートでは、途中の山小屋で水や飲み物を購入できます。


山の上なので平地より値段は高くなりますが、水2Lを最初から背負って登るのか、それとも途中で必要な分を購入するのかでは、ザックの重さが変わります。


特に初めての富士登山では、荷物を少しでも軽くすることは大切です。

富士山で売っているドリンクは高いが、持っていく重さを考えると購入した方がコスパ良い


ただし、山小屋に宿泊する場合は事前の予約が必要です。「疲れたから、その場で泊めてもらおう」ということは基本的にできません。


また、山小屋は宿泊施設というだけではありません。雷や悪天候などで登山を続けることが危険になった場合には、一時的な避難場所になることもあります。


私自身、以前、雲の中を歩いているときに雷がひどくなり、山小屋に緊急避難させてもらった経験があります。


休憩できる。トイレがある。食べ物や水分を補給できる。悪天候のときには避難できる。
山小屋が多いということは、単に「泊まれる場所が多い」ということではありません。


初めての富士登山で困ったときに、頼れる場所が多い
これが、吉田ルートの大きなメリットの一つです。

初めての富士登山は吉田ルートがおすすめな理由② トイレが多い

富士登山では、トイレの多さはとても重要です。


富士山は森林限界を超えているため、一般的な山のように急にお腹が痛くなった時、「登山道から少し外れて、木の陰で用を足す」ということができません。基本的には、山小屋などに設置されたトイレを利用することになります。

絶景だけどここでトイレに行きたくなったら…


吉田ルートは山小屋が多いため、登山中にトイレを利用できる場所も多いというメリットがあります。


そして、富士山ではもう一つ注意したいことがあります。


登り始めてから急にトイレに行きたくなることがある
「出発前にトイレに行ったから大丈夫」と思っていても、歩き始めると急に便意を感じることがあります。


私自身、出発前にはまったく便意がなくても、登り始めてからトイレに行きたくなった経験が何度もあります。


運動中に便意などの消化器症状が起こることは珍しくなく、長時間の運動ではこうした症状が起こることが研究でも報告されています。


そのため富士山では、「まだ行きたくないから大丈夫」ではなく、トイレを見つけたら利用しておくくらいでちょうどいいと思います。

富士山のトイレ

これは私自身の失敗からも強く感じています。
私は富士登山で、トイレを我慢して大変な思いをしたことが2回あります。


富士山では登山者が多く、場所によっては渋滞します。トイレに行きたくなっても、すぐ近くにトイレがあるとは限りません。


「次の山小屋まで我慢しよう」と思って歩いているうちに、だんだん余裕がなくなってきます。


そして、もう間に合わないかもしれないと思うと、どうしても焦ります。


私の場合は、焦って歩く速度が上がり、呼吸も乱れました。その結果、心拍数が上がり、もともとあった頭痛や高山病の症状まで悪化してしまいました。


富士登山では、急いで登ることは高山病対策としても避けたいことです。


せっかく富士山まで来たのに、
「景色を楽しむどころではない。早くトイレに行きたい……」
となってしまったら、本当にもったいありません。


富士山では、トイレを我慢することも、思わぬところで登山の負担につながります。
トイレを見つけたら、便意がなくても入っておく


これくらいの気持ちでいることをおすすめします。


吉田ルートは山小屋が多い分、トイレを利用できる場所も多く、「困ったときにトイレが見つかりやすい」という点でも、初心者に優しいルートなのです。

初めての富士登山は吉田ルートがおすすめな理由③ 救護所が3か所ある

富士山では、どんなに準備をしていても、体調を崩したり、転倒してケガをしたりすることがあります。

特に注意したいのが高山病です。富士山は標高3,776mの高所なので、普段は元気な人でも、頭痛や吐き気などの症状が出ることがあります。

そんなときに心強いのが救護所です。

2026年の吉田ルートには、五合目・七合目・八合目の3か所に救護所があります。

しかも、そこで対応しているのは素人ではありません。富士登山オフィシャルサイトによると、吉田ルートの七合目・八合目救護所には、登山シーズン中の一定期間、医師が常駐しています。

さらに2026年は、五合目救護所にも医師を配置する取り組みが行われています。五合目に配置される医師・看護師については、野外救急または山岳救急に関する国際資格を持つ人、または専門研修を受けた人を配置するとされています。

つまり吉田ルートでは、登山道の途中で体調が悪くなったときに、医師や看護師に相談できる場所が複数あるということです。

もちろん、救護所があるからといって、無理をして登っていいわけではありません。「ちょっと頭が痛いけど、もう少しだから頑張ろう」と無理をしてしまうと、症状が悪化することがあります。

体調がおかしいと感じたら、早めに休み、必要なら救護所で相談する。

「何かあったときに、専門家に相談できる場所がある」

この安心感は、初めて富士山に登る人にとって大きなメリットです。

なお、救護所は一年中開いているわけではなく、開設期間や時間は場所によって異なります。登山する年の最新情報を、出発前に必ず確認してください。

初めての富士登山は吉田ルートがおすすめな理由④ 五合目で登山の準備を整えやすい

吉田ルートの登山口である富士スバルライン五合目は、登山を始める前の準備を整えやすい場所です。

富士スバルライン五合目の様子

食事や買い物ができる施設があり、トイレや休憩できる場所もあります。登山用品のレンタルサービスも利用できるため、富士山に登るためだけに登山用品を一式購入する必要がありません。

特に便利なのが、五合目で登山用品を受け取り、下山後に五合目で返却できるレンタルサービスです。

たとえば「やまどうぐレンタル屋」では、吉田ルート五合目店で登山用品の受け取りやサイズ交換、返却ができます。登山靴やザック、レインウェアなど、かさばる道具を自宅から持っていかず、現地で受け取って、下山後はそのまま返却できます。下山後すぐに身軽になって温泉へ・・・という予定を組むことも可能です。

「富士山には一度登ってみたい。でも、そのためだけに登山用品を全部買うのはちょっと……」

という方にとって、レンタルは便利な選択肢です。

ただし、レンタルを利用するなら事前予約をおすすめします。

吉田ルート五合目店は予約なしでも利用できますが、公式サイトでも「在庫に限りがあるため、ご予約いただいた方が確実」と案内されています。特に登山靴などは、自分に合うサイズがなければ困ります。

やまどうぐレンタル屋の吉田口五合目店について確認する

そして、五合目にはもう一つ重要な役割があります。

五合目に着いたら、すぐに登り始めないことです。

富士登山オフィシャルサイトでは、高山病対策として、出発前に五合目付近の標高で1~2時間程度休憩して高度順応することをすすめています。

つまり、五合目で食事をしたり、トイレに行ったり、登山用品を確認したりしながら、身体を標高に慣らしてから登り始めることが大切です。

吉田ルートの五合目には、こうした出発前の準備を整えるための施設がそろっています。

「バスを降りたら、すぐ登山開始」ではありません。

五合目でしっかり準備をして、身体を標高に慣らしてから出発する。

このように、登山を始める前から準備を整えやすいことも、初めて富士山に登る人にとって吉田ルートの大きなメリットです。

やまどうぐレンタル屋の吉田口五合目店について確認する

初めての富士登山は吉田ルートがおすすめな理由⑤ 登山者が多く、初心者でも安心感がある

吉田ルートは、富士山の4つの登山ルートの中で最も多くの登山者が利用するルートです。

環境省の調査でも、吉田ルートの登山者数は他のルートを大きく上回っています。2024年の登山者数は、吉田ルートが約11万5千人だったのに対し、富士宮ルートが約5万3千人、須走ルートが約2万3千人、御殿場ルートが約1万3千人でした。

「人が多い」というと、マイナスに感じるかもしれません。

実際、吉田ルートは混雑することがあります。特に週末や祝日、御来光を目指す時間帯などは、登山道が渋滞することもあります。

しかし、初めて富士山に登る人にとって、登山者が多いことには安心できる面もあります。

登山道を歩いている人が多ければ、道に迷いにくく、周囲に人がいるという安心感もあります。

山頂へ向かう登山客 混雑していることの最大のメリットとは…

 

そして、私がもう一つ知っておいてほしいと思うのが、「混雑しているからこそ、自然と登るペースがゆっくりになることがある」ということです。

富士登山では、速く登ればいいというものではありません。

特に高山病を防ぐためには、急激に高度を上げず、無理のないペースで登ることが重要です。

私自身、富士山で高山病に苦しんだ経験がありますが、富士登山について書かれた書籍の中には、登山者が多くて大渋滞する時期には、結果的に登る速度が抑えられ、高山病を起こす人が減るという富士山の登山ガイドの話も紹介されています。

もちろん、「混雑していれば高山病にならない」という意味ではありません。

混雑はできれば避けたいものですが、吉田ルートでは「速く登らなければ」と自分でペースを上げなくても、前の登山者に合わせて自然とゆっくりになる場面があります。

富士登山では、周りの人を追い越してどんどん登るより、ゆっくり、一定のペースで登ることのほうが大切です。

登山者が多い吉田ルートには、そんな初心者にとっての意外なメリットもあります。

ただし、混雑が激しい時間帯には長い渋滞が発生することもあります。富士登山オフィシャルサイトも、混雑を避けるために週末を避けるなど、余裕を持った計画をすすめています。

初めての富士登山は吉田ルートがおすすめな理由⑥ 新宿から五合目まで高速バスで直行できる

初めての富士登山では、登山口までの移動も意外と大きな負担になります。

吉田ルートなら、新宿から富士スバルライン五合目まで、高速バスで乗り換えなしで行くことができます。

電車で河口湖駅まで行き、そこから五合目行きのバスに乗り換える方法もありますが、初めてなら、私は新宿から五合目まで直行する高速バスが分かりやすくておすすめです。

新宿を出発したら、あとは五合目まで乗り換えなし。重い登山ザックを背負って、電車やバスを何度も乗り継ぐ必要がありません。

都心から五合目へ直通する高速バスで行くと楽

そして五合目に到着したら、すぐに登り始める必要もありません。

前の項目で紹介したように、五合目で食事をしたり、トイレに行ったり、レンタル用品を受け取ったりしながら準備を整え、身体を標高に慣らす時間をつくってから登山を始めることができます。

つまり、

新宿から高速バス

富士スバルライン五合目に到着

食事・トイレ・登山準備・高度順応

吉田ルートから登山開始

という、とてもシンプルな流れで富士登山を始められます。

初めての富士登山では、登山口までの移動で疲れてしまわないことも大切です。

「新宿から五合目まで、乗り換えなしで行ける」

この分かりやすさは、吉田ルートを選ぶ大きなメリットの一つです。

2026年の運行情報や予約については、最新の高速バス案内を確認してから利用しましょう。

富士山五合目行き高速バスの詳細・予約はこちら

吉田ルートは初心者向き。でも、簡単な山ではありません

ここまで吉田ルートの良いところを紹介してきました。

山小屋やトイレが多く、救護所もあり、五合目には登山の準備を整えられる施設がそろっています。新宿から五合目まで高速バスで行けるなど、初めて富士山に登る人にとって利用しやすい環境が整っているのは確かです。

ただし、「初心者向き」と「簡単に登れる」はまったく別の話です。

富士山は標高3,776m。登山口となる五合目の時点ですでに標高2,000mを超えており、登るにつれて酸素が少なくなっていきます。

私自身、富士登山では何度も高山病による頭痛や吐き気に苦しみました。

さらに、吉田ルートは登山者が多いからこそ、混雑によって思うように進めないことがあります。疲れてきても、トイレに行きたくなっても、すぐに引き返せるとは限りません。

私も実際に、トイレを我慢しているうちに焦ってしまい、急いで歩いたことで呼吸が乱れ、心拍数が上がり、頭痛がひどくなった経験があります。

富士山では、「せっかくここまで来たのだから、もう少し頑張ろう」という気持ちが、かえって危険につながることがあります。

頭痛や吐き気など、高山病が疑われる症状が出たときは、無理に高度を上げないことが大切です。

また、悪天候にも注意が必要です。私自身、雲の中を歩いているときに雷がひどくなり、山小屋に緊急避難させてもらったことがあります。

吉田ルートには、初心者を助けてくれる設備や環境がたくさんあります。

でも、それらがあるからといって、無理をしても大丈夫ということではありません。

吉田ルートを選ぶことは、富士山を簡単に登るためではなく、初めての富士登山で困ったときに頼れる場所が多いルートを選ぶということです。

無理をしない。急がない。体調がおかしいと感じたら立ち止まる。

このことを忘れずに、富士山を楽しんでください。